2020年3月11日
日本とリヒテンシュタイン侯国は、1996年に正式な外交関係を結んではいますが、日本もリヒテンシュタイン侯国も相互に大使館は設置していません。そこで日本国は、スイスの首都ベルンにある「在スイス日本国大使館」に「リヒテンシュタイン侯国」も兼任しなさいという「兼轄令(けんかつれい)」を発令し、在スイス日本国大使が、リヒテンシュタイン侯国大使も兼任し、必要のある時は侯国へ出向くことになっています。
一方のリヒテンシュタイン侯国ですが、国の規模が小さく、日本のように世界各地に大使館や領事館を置き自国民を保護する、というようなことは不可能です。そこで大使館のない日本でのリヒテンシュタイン人の保護などは、隣国スイスに委託しています。こういうことは小さな規模の国ではよく行っている外交手法のひとつで、専門的には「利益代表国」と言う用語になります。
一例を挙げると、二つの国が紛争などで大使館を置けなくなると自国の利益を護ることができないために、別の第三国をこの利益代表国に指名し自国民の保護を委託する時にも使われる国際的な制度です。ちなみに第二次世界大戦中、日本はアメリカ合衆国と戦争をしていたわけですが、日本はこの間、スイスをこの利益代表国としていた事実があります。
リヒテンシュタイン侯国の在外公館(大使館や領事館)は長らくスイスのベルンにある大使館が唯一だった時代が続きましたが、その後EU本部のあるブラッセル(ベルギー)、アメリカ合衆国のニューヨークの国連代表部、ワシントンD.C.の大使館など、主としてヨーロッパの主要地点を中心に在外公館を順次開設し、侯国としての外交を進めています。
それゆえ、日本で出版された書籍でよく「侯国はスイスに外交を委任」と記述されていますが、もはやこれは適切な表現ではありません。
ただ、いずれの公館も小規模の人数で、大使以外のスタッフは1、2人程度、大使の半数近くが侯爵家直系の方という辺りに、この国らしい特徴が出ているといえましょう。
在外公館については、下記の侯国政府のホームページに一覧が掲載されています。
https://www.regierung.li/ministries/ministry-of-foreign-affairs/diplomatic-representations/