日本リヒテンシュタイン協会
Japanisch-Liechtensteinische Gesellschaft

 

世界の切手収集家を魅了するミニ国家の切手(5)

侯爵家の美術コレクションが切手になる

 この国の元首であるリヒテンシュタイン侯爵家は欧州随一の富豪である事はよく知られている事だが、その財力にモノを言わせて、代々に亘り美術品の蒐集をして来た事が数年前にNHKの特集番組でも取り上げられ反響を呼んだ。
 そして、2012年の秋、東京乃木坂の国立新美術館でそのコレクションの一部が公開された。鑑賞に訪れ、感嘆の溜息を吐かれた方も多かった筈だ。リヒテンシュタインでは極めて早い時期から、侯爵家が所有する美術品を切手の図案にした絵画シリーズを発行している。

第1次絵画シリーズ

 1949年3月15日と5月23日の二回に分けて9種類の絵画を図案にした切手が発行された。これが第1次である。代表的なものを幾つかピックアップする。絵画シリーズは全て単色グラビア印刷だが、クールボアジェ社が担当しているだけに、色調に優れ気品と風格が漂っている。

 券面10Rpはダ・ビンチの「ジェブラ・デ・ベンチ」、券面20Rpはルーベンスの「クララ・セレーナ」、券面30Rpはレンブラントの「自画像」、券面40Rpはマセイスの「男の肖像」である。その中で、ダ・ビンチの作品だけは現在の侯爵家にはなくワシントンのナショナルギャラリーに所蔵されている。侯爵家のコレクションの中でも燦然と輝くのはバロックの巨匠・ルーベンスの作品群で、自分の娘を描いた「クララ・セレーナ」は小品ではあるが美術全集には必ず取り上げられる程の名作で、2012年の乃木坂での公開の際にも展示され話題を浚った。

第2次絵画シリーズ

 1951年7月24日に発行された第2次シリーズは各券面に10Rpの寄付金付の切手として発行された。図案はオランダの絵画から3種類が選ばれた。

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 券面10Rpは風景画家のアルベルト・コイブの作品「運河」、20Rpは肖像画の名手と謳われるフランス・ハルスの「男爵の肖像」、券面40Rpはオランダ風景画の巨匠、ヤコブ・ファン・ロイスダールの名品「川辺の木々」である。何れも絵画作品の個性を的確に表現した優れた意匠の切手と言える。
 切手の発行と同時に原作の絵画をモノクロで表現した味わいの深いマキシマムカード(MC)も発売され、発行日の消印を切手に押印したものに仕上げ錦上花を添えた形にしてあるのが何とも心憎い。実寸を約60%に縮小したものを参考迄にご覧に入れる。

第3次と第4次絵画シリーズ

 侯爵家の美術コレクションはルネサンス美術とバロック美術に多くの力点が置かれているが、第3次と第4次はルネサンス期の美術作品を採り上げている。

 第3次は3種セットで、イタリア・ルネサンスの美術、第4次は4種セットで、ドイツ・ルネサンス美術の作家の作品を図案に採り上げて発行した。第3次のシリーズは1952年3月27日、第4次シリーズは翌1953年2月5日に発行されている。此処では、各シリーズから2種類ずつ選んで図案を紹介する。

 有名なフィレンツェの巨匠ボッティチェリの「聖母子像」、同じくフィレンツェ派の画家アンドレア・サルトの「聖ヨハネ像」、ドイツ・ルネサンスの代表的画家であるルーカス・クラナッハの「聖クリストフ」、同じくドイツ画家のハンス・クリムバッハによる「ハグ公レオンハルト像」である。
 絵画シリーズは第5次まであるが、第5次は第2次の図案をそっくり踏襲して券面額を変更した上で、寄付金を外して発行したものである。